建設労働と職業病-あなたの働く職場の環境
職業病は労働災害です
職業病とは、仕事が原因でかかる病気をいいます。
原因が仕事であるため、労災保険が適用されます。
国保組合では、職業病のなかでも特に呼吸器疾患について、建設業の全職種にわたる問題として、労災申請などに取り組んでいます。
「じん肺」とは
「じん肺」とは、“粉じんによる肺の疾患”のことです。
人間の身体には、異常な物質が体内に入り込むのを防いだり、排出したりする機能が備わっています。しかし、建設現場で日常的に行われている、建材の研磨や切断作業、過去に行われていた石綿の吹き付け作業などによる微細な粉じんは、身体の機能が追いつかず、肺に蓄積されていきます。
肺組織の異常はすぐおこるわけではありません。10~ 15年かけて進行し、肺の機能を衰えさせ、せきやたん、息切れ、呼吸困難などの症状が出てきます。症状が進行すると、仕事中の作業はもとより、階段の昇り降りもままならず、酸素ボンベが手放せない状態になるなど、日常生活にも支障をきたすようになります。
肺の機能がもとにもどることはありません。衰えることで体内に酸素が取り入れられなくなるため、その他のさまざまな器官に影響を与えることになります。
また、「じん肺」は粉じんの種類によってさらに細かく分類され、石工などにおこる遊離珪酸(ゆうりけいさん)が原因物質の「けい肺」、アスベスト(石綿)が原因物質の「アスベスト肺(石綿肺)」、その他「セメント肺」「炭素肺」などがあります。
アスベストによる病気
2012(平成24)年3月29日に労災保険にかかる認定基準が改正されました。アスベストとの関連が明らかな病気として、次の5つがあります。
《(1)石綿肺 (2)肺がん (3)中皮腫 (4)良性石綿胸水 (5)びまん性胸膜肥厚》
直接アスベストを扱っていない労働者でも、周辺作業で間接的なばく露を受けて病気になっていることもあり、多くの建設労働者が職種を問わず被害者になっています。また、喫煙者が石綿ばく露を受けている場合、石綿ばく露を受けていない人に比べ、5倍以上も肺がんの発症リスクが高いとの報告もあります。
アスベストによる病気は長い潜伏期間を経て突然発症します。早期発見のためには、定期的な検診を受けることが大切です
建設アスベスト訴訟最高裁判決
最高裁は2021年5月17日に国と建材メーカーの責任を認める判決を下しました。国の違法を認定し、屋内現場の建設作業従事者を救済しました。また、建材メーカーの共同不法行為を認め、市場シェアの高い企業等が共同して被害者に賠償することを命じました。
6月9日にはアスベスト被害者への迅速な賠償を図るため、「国の建設アスベスト賠償給付金制度」が成立しました。全国の仲間の力で勝ち取った歴史的成果です。
国保組合での取り組み
国保組合では、労働組合の労働対策部や職業病の専門医と連携して、次の取り組みをすすめています。
(1)胸部レントゲンの再読影
東京土建健診(支部集団健診や契約健診機関での受診)で胸部レントゲン検査を受けた40歳以上の方を対象に、職業病の専門医が「再読影」を行っています。
再読影とは健診機関の医師が診断をした後、見落とされやすいじん肺や胸膜肥厚斑(アスベストを吸い込むことで肺を覆う胸膜が部分的に厚くなる症状)などを職業病の観点から再度読影し、職業病の可能性があると判定された方には、国保組合からピンク色の封筒で「専門医への受診のおすすめ」(下図参照)を通知し、速やかな労災申請につなげるものです。
仕事中の熱中症も職業病(労働災害)です
屋外の現場で働く建設労働者にとっては、夏場の熱中症も気をつけたい労働災害の一つです。
熱中症は、予防対策が重要ですが、建設労働者の多くは、一般に予防法として紹介される冷房の活用や日差しを避けることが難しい環境で働いています。
熱中症の症状は、めまいや立ちくらみなどの軽度のものから、重くなるとひきつけや意識を失うこともあります。最悪の場合、死に至ることもあり、決して甘く見てはいけません。
夏の現場では、こまめな水分補給を心がけ、十分な睡眠と休養で疲労に負けない体づくりをしましょう。
仕事中の熱中症の治療には、労災保険が適用されますので、受診の際はご注意ください。
(2)入院分の診療報酬明細書(レセプト)調査
毎月、国保組合に届く入院分のレセプトから、職業性と考えられる呼吸器の病気と関連している病名が記載されているレセプトを抽出し、専門医に職業病の可能性について判定をお願いしています。
その結果、病気が職業性の可能性があると判定された組合員には、国保組合からピンク色の封筒で「専門医への受診のおすすめ」(下図参照)を送付しています。通知を送付した後、国保組合の保健師が電話で職業病の説明や現在の状況の聞き取りなどを行っています。
(3)お知らせが届いたら早めに受診を
受診が必要とのお知らせが届いたら、早めに専門医で受診しましょう。専門医に診てもらうことで、アスベストなどを吸ったためにおきる症状や病気が的確に判断でき、労災申請に結びつけることができます。労災認定を受けると、医療費が補償されるだけでなく、休業補償や年金などを受け取れることがあります。また、国保組合で支払った医療費が労災保険から戻ってきます。
2022年度までに、1,093人の仲間が「肺がん」、「じん肺」、「石綿肺」などの職業病による労災認定を受け、医療費や休業補償を受けており、2002年から2022年までの間に国保組合へ戻ってきた医療費は約24億円にものぼっています。
職業病で労災保険適用の可能性がある病名
肺がん、中皮腫、胸膜肥厚斑、結核、肺気腫、じん肺、間質性肺炎、慢性気管支炎、胸膜炎、胸水貯留、肺線維症、アスベスト肺、けい肺、気管支拡張症、ぜんそく性気管支炎、気管支ぜん息、びまん性胸膜肥厚、慢性閉塞性肺疾患、びまん性汎細気管支炎、非定型抗酸菌症
<胸部レントゲン再読影:受診おすすめ通知> | <入院分レセプト:受診おすすめ通知> |
専門医によるじん肺検診
国保組合は、じん肺の専門医がいる下記の4カ所の医療機関と、「専門医によるじん肺検診」の契約を結んでいます。
「専門医によるじん肺検診」は医療機関の窓口で2,000円を負担すれば受診できる制度です。
受診を希望される方は、下記の医療機関に直接お申し込みください。
なお、受診の際には必ず保険証を持参してください。
じん肺検診の内容
- 医師の診察
- 胸部レントゲン検査
- 医師が必要と判断した場合
合併症の検査
肺機能検査 など
医療機関名 電話番号 所在地
芝健診センター
03-3431-7491 東京都港区新橋6-19-21
立川相互ふれあいクリニック健康管理センター
042-524-7365 東京都立川市錦町1-23-4
御成門内科クリニック
03-5425ー2530 東京都港区芝公園1-3-10 ハリファックス芝ビル2F
田園調布呼吸器・内科クリニック
03-6662-6711 東京都大田区田園調布1-1-17 ステラート田園調布1F
ご不明な点は、各医療機関または国保組合の健康増進課(03-5348-2982)にお問い合わせください。
アスベスト疾患通院支援金
石綿肺患者の肺がんの早期発見・早期治療、速やかな労災申請、受診者の費用負担軽減を目的に、職業病専門医療機関である、芝診療所、柳原病院、御成門内科クリニック、立川相互ふれあいクリニックで、石綿肺で経過観察中の患者に、医師が特段の必要があると判断して、精密検査(CT検査等)のために呼び出しを行い、それに応じた場合は、通院支援金として、1回につき3,000円を支払います。
職業病について相談したいとき
お話を伺い、専門医の紹介や労災申請のアドバイスを行っています。
くわしくは下記にご連絡ください。
●所属の支部の労災保険実務担当書記…支部一覧はコチラ
●東京土建一般労働組合 労働対策部…03-5332-3971
●東京土建国保組合 健康増進課………03-5348-2982